サイト売買の税金は?個人・法人の計算方法や所得区分を解説

サイト売買の税金は?

こんにちは、WP M&A運営者です。サイト売買(M&A)が活発になってきて、個人のブロガーさんやアフィリエイターの方がサイトを売却するケースも、法人が事業としてサイトを購入するケースも、本当に増えましたね。

サイトが売れると大きな金額が動くので嬉しい反面、必ずついて回るのが「税金」の問題です。「サイト売買で得た利益の税金って、どう計算するの?」「個人の場合、確定申告はどうすればいい?」「個人事業主だけど、所得区分は譲渡所得?それとも事業所得?」など、悩みは尽きないかなと思います。

また、買主側も「購入費用は経費になるの?」「勘定科目や仕訳はどうする?」「消費税の扱いは?」といった会計処理や、「のれん」という言葉も出てきて、戸惑うことも多いですよね。

この記事では、サイト売買に関わる税金について、特に気になるポイントを「売主」と「買主」それぞれの立場で整理していこうと思います。

  • サイト売買で発生する税金の種類
  • 【売主】個人の所得区分による違い
  • 【買主】のれん償却の節税メリット
  • トラブルを防ぐ消費税の確認ポイント

サイト売買の税金:売主の注意点

まずはサイトを売却する「売主」の立場から、税金について見ていきましょう。特に個人の方(個人事業主や副業ブロガーさん)は、その利益がどの「所得区分」になるかで、納税額が大きく変わる可能性があるので、ここは最重要ポイントですね。

個人の所得区分は事業所得か

サイト運営を本業としていたり、継続的に収益を上げていて、毎年の確定申告で「事業所得」として申告していた場合、そのサイトの売却益も「事業所得」になるのが一般的です。

この場合の計算は、他の事業収入と同じですね。

所得金額 = 売却収入 − 必要経費

必要経費には、サイト売買プラットフォームに支払った仲介手数料などが含まれます。もし過去にそのサイトを購入していたら、未償却の残高(帳簿価額)も経費になりますが、自作サイトの場合は帳簿価額が0円のことが多いかも。

事業所得のポイント

事業所得の最大のポイントは、給与所得など他の所得と合算されて「総合課税」の対象になることです。所得が多ければ多いほど税率が上がる「累進課税」が適用されるため、売却益が大きいと税率が最大で約55%(所得税+住民税)になる可能性もあります。

税務署は「過去の申告との一貫性」を重視する傾向にある、と言われます。毎年「事業所得」で経費を計上して節税していたのに、売る時だけ「これは事業じゃありません」というのは、ちょっと難しいかもしれませんね。

譲渡所得になるケースとは

一方で、サイトの運営が趣味の範囲だったり、事業として申告していなかった場合、その売却益は「譲渡所得」として扱われる可能性があります。

譲渡所得の計算方法は、事業所得とまったく違います。

譲渡所得 = 売却価額 − (取得費 + 譲渡費用) − 特別控除50万円

まず、最大50万円の特別控除があるのが大きな違いですね。さらに重要なのが、サイトの「所有期間」です。

  • 短期譲渡所得(所有5年以下): 所得金額の「全額」が総合課税の対象
  • 長期譲渡所得(所有5年超): 所得金額の「1/2」が総合課税の対象

もし所有期間が5年を超えていれば、課税される金額が半分になるので、これは非常に大きなメリットです。ただし、どの所得区分に該当するかは、過去の申告状況や運営実態に基づくため、自己判断は禁物です。

雑所得での申告は可能か

会社員の方が副業としてブログを運営し、毎年のアフィリエイト収入などを「雑所得」として申告していたケースもあると思います。

この場合、サイト売却益も「雑所得」として申告することになります。雑所得も事業所得と同様に「総合課税」の対象となるため、給与所得などと合算されて累進課税が適用されます。

雑所得は、事業所得(青色申告)のような青色申告特別控除や、損失が出た場合の損益通算(他の黒字所得と相殺すること)ができない、といった違いがありますね。

個人事業主の計算方法

個人事業主として開業届を出し、サイト運営をメインの事業としている場合、売却益はほぼ間違いなく「事業所得」になるかと思います。

計算方法は前述の通り「売却収入 − 必要経費」です。

ここで注意したいのが、特に自社(自分)でコツコツ育てたサイトの場合、「帳簿価額が0円」になっているケースが多いことです。

なぜ簿価0円になるの?

サイト制作にかかった費用(サーバー代、ドメイン代、外注費など)は、その都度「経費」として計上していることが多いからです。そのため、売却時点での資産価値(帳簿価額)は0円と扱われます。

もし簿価0円のサイトが500万円で売れたら、仲介手数料(仮に50万円)を引いた450万円が、そのまま利益(所得)として計上されます。予想以上に利益が大きくなり、納税額に驚く…ということもあり得るので、注意が必要ですね。

確定申告はいつまでに必要か

サイト売却で利益(所得)が出た場合、原則として確定申告が必要です。

特に、副業(雑所得)でサイトを売却した会社員の方でも、その所得が年間20万円を超える場合は確定申告の義務が発生します。

確定申告の期間は、ご存知の通り、所得が発生した翌年の2月16日から3月15日までです。売買が成立した年の翌年ですね。

消費税の納税義務をチェック

売主にとって、所得税や住民税と同じくらい重要なのが「消費税」です。

ポイントは、あなたが「課税事業者」か「免税事業者」か、という点です。

  • 免税事業者(通常、2年前の課税売上高が1,000万円以下):売却代金に対する消費税の納税義務はありません。100万円で売れたら、100万円が(消費税抜きの)売上となります。
  • 課税事業者(通常、2年前の課税売上高が1,000万円超):売却代金に対して消費税(10%)がかかります。100万円で売れた場合、買主から110万円を受け取り、10万円を国に納付するのが原則です。

交渉時の「税込」「税抜」は命取り!

もしあなたが課税事業者なのに、「100万円(税込)」で契約してしまうと、手取りは約91万円(100万 ÷ 1.1)になってしまいます。

一方で「100万円(税抜)」で合意すれば、110万円を受け取り、10万円を納税するので、手取りは100万円です。

この「税込か税抜か」の認識ズレは、手取り額に10%の差を生むため、交渉の初期段階で必ず確認してください!

サイト売買の税金:買主の会計処理

次に、サイトを購入する「買主」の立場から見ていきましょう。買主の最大の関心事は、支払った購入代金を「いかに経費化できるか(節税できるか)」ですよね。ここで「のれん」という重要なキーワードが出てきます。

購入時の勘定科目はどうなる

サイトを購入した費用は、残念ながら「支払手数料」や「広告宣伝費」のように、購入時に一括で経費(損金)にすることはできません。

サイトは収益を生み出す「資産」として扱われるため、貸借対照表(B/S)に資産計上する必要があります。

実務上、サイト売買は個別の資産(ドメイン、記事データ)の購入というより、収益を生む仕組み全体を買う「事業譲受」とみなされることが多いです。

この時、購入代金のうち、個々の資産の時価を超える「目に見えない価値(ブランド力や収益力)」の部分が、「のれん(営業権)」という勘定科目(無形固定資産)で処理されます。

買主側の仕訳を解説

例えば、1,000万円でサイトを購入したとします。そのサイトを構成するドメインや記事データの時価がほぼ0円だった場合、会計上の仕訳は非常にシンプルです。

(借方)のれん 10,000,000円 / (貸方)現金預金 10,000,000円

このように、支払った1,000万円が「のれん」という資産として計上されます。M&A仲介会社に支払った手数料なども、この「のれん(取得価額)」に含めるのが一般的ですね。

のれん償却の節税効果

さて、ここからが買主にとって最大のポイントです。

資産計上した「のれん」は、将来にわたって少しずつ経費化していきます。これを「償却」と呼びます。この償却ルールが、「会計」と「税務」で異なるのがミソなんですね。

  • 会計ルール(投資家向け):「最長20年」の範囲で、会社が合理的に見積もった期間(例: 10年)で償却します。
    (例:1,000万円 ÷ 10年 = 年間100万円の費用)
  • 税務ルール(税金計算上):会計で何年設定しようと、法律で「一律5年間」で償却(損金算入)すると決まっています。
    (例:1,000万円 ÷ 5年 = 年間200万円の損金)

一般的には「5年償却」?

上記の例だと、会計上の費用(P/L)は100万円なのに、税金計算上の経費(損金)は200万円も計上できます。この差額100万円分だけ、課税される所得が圧縮されるため、法人税の納税額が大きく減るんです。

これは、サイトM&Aにおける買主側の非常に強力な財務的メリットと言えますね。

会計処理に関しては、顧問税理士さんなど専門家に相談をするようにしてください。

まとめ:サイト売買の税金相談

サイト売買の税金は、本当に複雑ですよね。私もこの世界に入った当初は、所得区分や「のれん」の扱いにかなり頭を悩ませました。

売主(特に個人)は、「所得区分」をどう扱うか。買主は「5年償却の節税効果」をどう活かすか。そして、当事者全員が「消費税(税込・税抜)」の確認を怠らないこと。

これらが重要なポイントかなと思います。

税務判断は必ず専門家に相談を

この記事で解説した内容は、あくまで一般的なサイト売買の税務・会計の概要です。実際の税務処理は、個々の取引内容や過去の申告状況によって大きく異なります。

特に、個人の所得区分の判定や、法人の「のれん」の評価は、税務調査でも論点になりやすい部分です。

売買契約を締結する「前」の、価格交渉の段階で、必ずサイト売買(M&A)の経験が豊富な税理士に相談することを強くおすすめします。

「売ってしまった後」「買ってしまった後」では、打てる手が限られてしまいますからね。