サイト売買 アドセンス譲渡と再審査の罠

サイト売買とアドセンスの注意点

サイト売買で「アドセンス収益が出ているサイト」って、すごく魅力的に見えますよね。私も、サイトM&Aに興味を持ち始めた頃は、すぐに収益が手に入る「金のガチョウ」みたいに感じていました。

でも、サイト売買におけるアドセンスの取り扱いには、本当に大きな落とし穴があるんです。特に、アカウントの譲渡に関する規約や、購入後の再審査の問題を知らないと、「こんなはずじゃなかった…」と頭を抱えることになりかねません。

収益が出ているサイトの売却を考えている方も、これから購入しようとしている方も、アドセンスの価格相場や査定方法だけでなく、審査に落ちた場合のリスクも知っておく必要があります。この記事では、サイト売買とアドセンスの複雑な関係について、知っておくべきポイントを整理していきますね。

  • アドセンスアカウントが譲渡できない絶対ルール
  • 購入後に「再審査」が必須となる理由とリスク
  • サイト売買におけるアドセンス収益の価格相場
  • 購入前に確認すべきデューデリジェンス(資産査定)のやり方

サイト売買 アドセンスの絶対規約

まず最初に、アドセンスサイトの売買を考える上で、絶対に知っておかなければならない「大前提」の話から始めます。ここが、すべてのリスクの出発点になりますね。

アドセンスアカウント譲渡の禁止

サイト売買の世界では常識なんですが、Google AdSenseのアカウントは譲渡できません。

これはGoogleの利用規約で明確に禁止されています。なので、サイト売買(M&A)で取引されるのは、あくまでドメインやサイトのコンテンツ、データベースといった「資産」だけ。

「アドセンスアカウントごと売買する」ことは、規約違反であり、絶対に不可能です。この事実が、次の「再審査」というハードルを生み出すことになります。

収益の引き継ぎができない理由

アカウントが譲渡できないということは、当然ですが「売主のアドセンス収益化の権利」も買主には一切引き継がれない、ということです。

売主のサイトでは昨日まで広告が表示されていても、サイトの所有権が買主に移った瞬間、売主は自分のアカウントからそのサイトを削除し、広告掲載を停止するのが(規約上の)本来の流れです。

買主は、そのサイトを「まっさらな状態」で手に入れる、というイメージを持っておくのが重要かなと思います。

購入後に必須となる再審査

じゃあ、購入したサイトでどうやって収益化するのか?

答えは、「買主が、自分のAdSenseアカウントで、購入したサイトを“新規サイト”として追加申請し、Googleの審査を受け直す」です。

これが「再審査」と呼ばれるプロセスですね。売主の承認ステータスは関係ありません。買主とサイトの新しい組み合わせで、ゼロから審査されるんです。

審査期間は数日から数週間かかることもあり、その間はもちろん広告収益はゼロになります。

審査に落ちる最大のリスク

このプロセスの最大のリスクは、もうお分かりかと思いますが、「再審査に落ちる」ことです。

「え、売却時点で広告が出てたのに?」と思うかもしれませんが、これは本当によくある話です。なぜなら、Googleの審査基準は年々厳しくなっているから。

昔のゆるい基準で合格したサイト(売主)が、現在の厳しい基準(買主)で審査されると、「有用性の低いコンテンツ」や「サイト構造の問題」を指摘されて不合格になるケースが多いんですね。

契約書が命綱

もし再審査に落ちたら、そのサイトは収益ゼロの「箱」になってしまいます。このリスクを回避するため、サイト売買プラットフォーム(ラッコM&Aさんなど)では、契約交渉の段階で「万が一、審査に落ちたら取引をどうするか(例:白紙撤回、減額など)」を双方で合意し、事業譲渡契約書に明記することを強く推奨しています。

ここは法的な取り決めになるので、不安な場合はプラットフォームの担当者や専門家に相談するのがベストですね。

広告コード貼り替えの作業

無事に審査に合格したら、最後は技術的な作業です。

売主のアドセンス広告コードがサイトに残っている場合、それをすべて削除し、買主であるあなた自身の(審査に合格した)アドセンス広告コードに貼り替える必要があります。

WordPressなら、テーマの機能やプラグインで一括管理していることが多いので、その設定箇所(例:「広告」設定やウィジェット、テーマヘッダーなど)を見つけて、コードを差し替える作業が発生しますね。

サイト売買 アドセンスの査定と相場

リスクの話が続きましたが、もちろん再審査をクリアすれば大きな資産になります。次に、アドセンスサイトが実際「いくらで売買されているのか」、その価格相場と査定のポイントを見ていきましょう。

サイト売買の価格相場は?

アドセンスサイトの売却価格相場は、そのサイトの収益性によって、大きく2つのモデルで評価されることが多いです。

1. 利益倍率モデル (安定収益がある場合)

月間収益(営業利益)が安定して出ているサイトの計算方法です。

計算式: 月間収益 × 12~30ヶ月分

例えば、月10万円の利益なら、120万円~300万円が相場目安になります。この「12~30ヶ月」という幅が、次の「売却価格を決める要因」に関わってきます。

2. 資産価値モデル (収益が低い・赤字の場合)

まだ収益がほとんど出ていないサイトでも、PV(アクセス数)や記事数自体に価値があれば売買対象になります。

参考までに、あるプラットフォームのデータでは、利益1万円未満のサイトでも「5万円~30万円」程度で成約しているケースが多いようです。

あくまで一般的なデータ上の目安ですが、評価モデルをテーブルにまとめると以下のようになります。

サイトの状況評価モデル相場計算式(参考)
月間利益 1万円以上利益倍率モデル月間収益 × 12~30ヶ月分
月間利益 1万円未満資産価値モデルPVや記事数に基づく(例:5万~30万円)

これらの数値はあくまで一般的な目安です。実際の価格は、サイトのジャンル、将来性、必要な運営コストなどによって大きく変動します。正確な査定額は、専門のM&Aプラットフォームに相談してみてください。

売却価格を決める要因

「月間収益 × 12~30ヶ月」という価格の幅は、何で決まるんでしょうか?

これはズバリ、「買主が負うAdSense再審査リスクの大きさ」です。

  • 高倍率(30ヶ月に近い)サイト:コンテンツの独自性が高く、ポリシー違反もなく、サイト構造もクリーン。誰が再審査しても合格する可能性が極めて高い。= 買主のリスクが低い。
  • 低倍率(12ヶ月に近い)サイト:YMYL(医療・金融など)領域だったり、古い情報が多くてリライトが必要だったりする。= 買主の再審査リスクが高い。

高値で売りたい売主さんは、収益を上げるだけでなく、「買主が再審査に通りやすいクリーンな状態」にサイトを整備しておくことが、すごく重要になりますね。

購入前のコンテンツ査定

買主として「再審査落ち」のリスクを避けるために、購入前のデューデリジェンス(資産査定)が必須です。

私が見るなら、最低でも以下の点は厳しくチェックします。

  1. コンテンツの独自性:記事の文章をコピペしてGoogle検索し、他のサイトと丸かぶりしていないか(コピペチェック)。
  2. AdSenseポリシー違反:タバコ、処方薬、性的な内容、著作権違反の画像など、禁止コンテンツがないか全ページ目視。
  3. 必須ページの有無:「プライバシーポリシー」「問い合わせフォーム」「運営者情報」がちゃんと設置されているか。

特に、WordPressが自動生成する「タグページ」や「アーカイブページ」が、中身スカスカのまま大量にGoogleにインデックスされていると、「有用性の低いコンテンツ」と見なされやすいので要注意です。

GA4とGSCで収益を分析

売主が提示する「月XX万円です」という収益スクショは、正直、あまりアテになりません。

信頼できるのは「生のデータ」だけ。交渉が始まったら、必ず以下の2つの閲覧権限をもらいましょう。

1. Google Analytics 4 (GA4)

「どの記事が」収益を生んでいるのかを確認します。「レポート」→「エンゲージメント」→「ページとスクリーン」などで、「広告収益合計」を見れば、収益が特定記事に依存しすぎていないか、リスクを評価できます。

2. Google Search Console (GSC)

サイトの健全性を確認します。「セキュリティと手動による対策」メニューを見て、「手動による対策」(=ペナルティ)がないか必ず確認してください。もしペナルティがあったら、そのサイトは絶対に見送るべきです。

これらのデータ分析は、サイトM&Aの専門知識も必要になるため、自信がない場合はM&Aプラットフォームの担当者や、信頼できる専門家に相談することを強くお勧めします。

禁止コンテンツの最終確認

GSCでペナルティがなくても、サイト内にAdSenseの規約違反コンテンツが1ページでも残っていると、再審査に落ちたり、合格後も広告を止められたりします。

特に見落としがちなのがこのあたりです。

  • タバコ関連:電子タバコ(VAPE)やシーシャ(水タバコ)の紹介もNGです。
  • 処方薬:海外の医薬品の個人輸入代行アフィリエイトなども危険ですね。
  • 性関連:直接的でなくても、援助交際などを「想起させる」コンテンツもポリシー違反です。

売主のアカウント(ポリシーセンター)を画面共有で見せてもらうのが一番確実ですが、難しい場合は、買主側で全ページを厳しくチェックするしかありません。

サイト売買とアドセンスの結論

ここまで見てきたように、「アドセンスサイトの売買」は、アカウント譲渡不可と再審査という、他のM&Aにはない特殊なハードルがあります。

賢明な投資家さんたちは、もはや「アドセンス収益」を買っているというより、「収益化可能なトラフィック(アクセス)を持つWeb資産」を買っている、という意識に切り替わっているかなと思います。

アドセンスでの再審査合格は、購入後の最初のハードルでしかありません。その資産(トラフィック)をベースに、アドセンス(合格した場合)、アフィリエイト、その他の広告(SSP)など、収益源を多様化させてリスクヘッジすることが、購入後の本当の目的になります。

サイト売買とアドセンスの関係はとても複雑ですが、この規約の壁をしっかり理解して、適切なリスク管理をすることが成功の鍵ですね。